涙の国体3連覇!愛媛国体優勝。小嶺恵美サポート記録
愛顔つなぐえひめ国体セーリング競技会場へウィンドサーフィンの応援に行ってきました。
愛媛県代表、一宮グループ所属の【小嶺恵美】(通称みねこ)のサポートです。
滞在期間のレポートと、ここに至るまでのみねこについてほんの少しだけ書きたいと思います。
《 風に翻弄された大会運営 》
愛媛県新居浜市は瀬戸内海に面した”穏やかな”海が一面に広がる地域。
なかなか厳しい大会運営になることはもうずっと分かっていた事でした。
結果的に、風がほとんど無い中でレースを行ったり、風が吹くことをひたすら待つウェイティング時間がとても長い大会となりました。
もともとは
30日:トライアルレース
1日:2本レース
2日:2本 レース
3日:2本 レース
4日:表彰
というスケジュールでしたが、
30日:トライアルレース
1日:1本レース
2日:1本 レース
3日:1本 レース
4日:表彰
と3本しかレースを行うことが出来ませんでした。
このたった3本のレースの重さ。。。
波瀾万丈な大会となりました。
《 1位 と 2位 の大きすぎる差 》
1日目は風が無く、かろうじて1本行ったレースは、風下に打たれたはずのマークに上るようにして向かうことになるなど、風向が180度フレるような恐ろしいコンディションだったようです。
そんな中ウィンドサーフィン女子はコース短縮され、2上マークでのフィニッシュとなりました。
レースを成立させなければという運営側のプレッシャーと、風向が大きくフレすぎて、普段通りレースが出来ないという選手側の緊張感の中で成立した1本目。
みねこは愛媛県代表選手としてどんなコンディションでも前を走らなければならない重圧の中で、なんとか2位でゴールしました。
昨年、みねこは岩手国体で、
全 レ ー ス 1 位
でゴールし完全優勝を果たしました。
その事もあり、2位で帰ってきたみねこに周囲の人は『明日こそがんばれ!』というような反応だったようです。
つまり、2位ではダメなんだと。
他の人との総合得点を競うものなので、結果的に1本も1位を取らなくても優勝出来ることもあります。
でも、そのときにみねこは
1位で戻ってこないとダメなんだと感じたようです。
周囲の人達はもちろんそんなつもりで言ったのでは無いと思います。期待を込めてみねこに明日も頑張って!と言ったんだと思います。
でもみねこにとっては、絶対に勝たなくてはいけないという想いをさらに強くさせた初日になりました。
《 1本 のレースの大切さ 》
2日目も風は無く、前日実施できなかった分も繰越して3本行う予定でした。
でも本当に風が無く、時々放送される現在の風速は2.5ノットなど、なんとか風軸が取れるかなくらいの風でした。
結果的に朝の1本だけ行い、そのレースでみねこは1位を取って帰ってきました。
しかも、そのレースでリコール(フライング)があったようでした。
リコールはそのままゴールしても得点になりません。失格となり出場者数プラス1の得点となります。リコールした人は、その直後にスタートライン横の船を回って解消しなければなりませんが誰もそれをしていませんでした。
みねこも含め何人かの選手が "自分がリコールしたのかもしれない" と順位が貼り出されるまでざわつく1日となりました。
あと1日を残して2本しかレースが成立できていない状況にリコールの発生があり、なかなか緊迫した2日目となりました。
その日のうちに順位が貼り出され、みねこはリコールではありませんでした。
ほっと一安心したと同時に、もう翌日は最終日でした。
これで全てが決まります。
最終日に向けて気持ちを切り替えていました。
《 海には風の神様がいるんだと本気で思った 》
この大会でのみねこのライバルは
リオ五輪出場の福井代表選手と
ロンドン五輪出場の東京代表選手。
全日程で4本以上成立すると、一番悪いポイントをカットすることが出来ます。
まだ2本しか行っていなかったので、最終日に1本で終わるか、2本以上行うかでかなりポイントが変わる状況でした。
東京の選手とは2ポイント差、福井の選手もリコールをカットすればトップ争いでした。
最終日、午後から風が吹く予報でした。
朝一番からのレースを予定していたので、9時前からウェイティング。
そのまま長い長ーーいウェイティングとなりました。
『いつフラッグが揚がるか分からないから、お昼ご飯も食べれないよ、、』
とみねこはウィダーなどをちょこちょこつまむ程度で過ごしていました。
選手にとって風待ちのウェイティングはなかなかストレスになります。
ところが14時頃から、
ウィンドサーファーの芝生エリアで、所々でソワソワとしはじめました。
『沖の方の島の向こうは風速10メートルくらいらしい』
強い風がどんどん近づいているようでした。
『そういうことは良くあるけど、、、必ずしもこっちまで届かないんだよ、、』と新居浜を良く知る者として、みねこは風が見えるまで冷静に待ちました。
でも間もなくして変化が現れてきました。
『あっちのほう雲の晴れ間があるね‼もしかしてホントに吹いてくるかも』
そんなことをジュン達と話していたら
水平線にぼんやり霞んでたたずんでいた島々が、くっきりとグレーの細い帯の上に浮かび始めました。
水平線をなぞるその帯はだんだんと幅を広げて私たちの方にその黒い面積を広げて来ました。
あんなに分かりやすいのか!というくらい、風が迫ってきました。
海面の白と黒の境目はハッキリまっすぐに別れていました。
みるみるうちに真っ白だった新居浜の海は全て真っ黒に!
30分前の穏やかさを忘れるほど強風になりました。
ウェイティングが解除されいよいよレースです!
これからあと2本やるかもしれない。そんな雰囲気でした。
《現在の風速は17ノットです》と放送が流れます。
→風速はノットの約半分なので風速8メートルほど
一気に風が吹き上がり、ヤシの木はワサワサと揺れていました。
風は上がっています。
フォーーーン‼
合図が鳴りました。
いよいよ出艇です!
メンズが先に出ていきます。
各県の応援歌が重なるように合唱されます。
『セッティング、変えたほうがいいかな』
みねこは出艇して走り出すメンズを見ながら、最後までセッティングを詰め直しました。
みねこにとって、
この風域は得意ではなくむしろ苦手でした。
苦手な強風を克服すべく、今年は本当に沢山の試みをし、海外選手やコーチに学び、それまでの自分を否定しながらあらゆる挑戦を続けてきました。
なかなか結果に結び付かない時期を過ごしながら、本人よりむしろ周りが悶々とすることも多かったのではとすら思います。
本人はいつもただひたすら努力してきました。
結果はいつか必ずついてくると信じて努力するしかないことを知っているからだと思います。
とにかく、結果に出ない時期も、何も落ち込むことなく、次の課題を見つけてひとつひとつ努力し続けてきました。
まだまだ強風を克服できたわけじゃないけど、今日ここで、今の自分の出来るベストを尽くして勝つしかない。この時もそんな感じだったんじゃないかなと思います。
海を見る表情は、珍しく若干緊張している様子でした。
浜には所属の一宮グループの応援に来て下さった方々や、
チーム愛媛のみんなが駆けつけ、応援歌を歌って見送ってくれました。
この頃には空が晴れていました。
海には白波が立ち、風が上がっているようでした。
出艇するウィンドサーファーの激励のために浜には多くの人が駆けつけ、一気に盛り上がった雰囲気の中、レディースの合図が鳴り一斉に海に出ていきました。
ー 現在の風速は20ノットです ー
さっきより風が上がっています。
セッティングを最後まで気にしていたみねこ、大丈夫かなと小池さんと最後まで心配していました。
ハーバーからレースは見えません。
私たちは観戦用のスクリーンがあるテントに向かい、中継を見ることにしました。
中継ではウィンドサーフィン男子が放映されました。
男子の愛媛県代表の工藤輝がずっと中継されました。
輝頑張れ!!!!!
と小池さんと応援しながら、女子は映らないのかと待ちましたが結局映らず、
トラッキングを見ると女子もゴールしていました!
そして、1レースを終えて浜に向かってきている!
みねこが1位でした。
なんと下マークまで他の選手と接戦ののち、最後にトップフィニッシュで1位に!
胸が熱くなりました。
そんな感情に浸っている暇もなくみねこを迎えに浜に向かい走りました。
小池さんはついさっき、帰りの空港に向かって出発したところでした。
一人でカメラを持って浜まで走りました。
浜につくと、ちょうどみねこが帰着したところでした。
海から戻るところを撮れなかった!
なんという。。。orz
チーム愛媛のみんなに囲まれ、
みねこが手で顔をぬぐっていました。
みねこが泣いてる。
久しぶりにみねこの涙を見ました。
岐阜の時は、泣いていた気がします。
リオ五輪予選が終わってあかねたちとご飯を食べに行ったとき、熱くなっていろんな話がヒートした時でさえ、泣いてはなかった。
岐阜ぶりだと思うと、、、何年だ?
5年ぶりの涙だ。
ゴールした瞬間、海の上で号泣したそうです。
その光景を想像しただけで泣けてきます。
浜についても目が赤くて、涙が光ってました。
まさかの
この1本でウィンドサーフィン女子は終わってしまいました。
風が吹きすぎて、女子は危ないとなってしまったようで、男子は2本実施しましたが、女子だけ1本で終了となりました。
もし、あと1本あったとしても、
この3本目のレースで1位で帰ってきた事で、みねこの優勝はこの時点で決まりました。
本当におめでとう。
ものすごい重圧のなか、みねこは見事に優勝しました。
国体3連覇、6回目の優勝。
勝って当たり前の状況で勝つ、本物の強さだと木村監督は語ってくれました。
落ち着いたところで道具を前に一通り記念撮影なんかをして
輝がいい走りをして浜へ戻ってきました。
海に入って迎えに行きました。
レースを終えて、二人で今日を振り返っていました。
道具を片付け、
みねこは海に担いで放り投げられていました。
ウィンドサーファーらしい祝われ方でした。
陽が沈んでいきました。
みねこの愛媛国体が終わりました。
愛媛のテントに戻ると、監督と抱き合ってまた泣いていました。
涙が止まらないようで、号泣するみねこを木村監督はヨシヨシと抱きしめてました。
こんなみねこの姿を見て、私も目頭が熱くなり、涙が出てきました。
真っ暗になるハーバーに、"報道"というみどりのゼッケンを着た人達がゾロゾロと機材を抱えて愛媛のテントに集まってきて、みねこを囲んで取材が行われることになりました。
真っ暗な中で、ライトに真っ白に照らされてカメラが囲む中、
後輩のミキティがマイクを持ち、
その日優勝を決めたみねこの、
まるでヒーローインタビューでした。
いまの率直な気持ちはという問いに、
少し考えて、言葉に詰まりながら
『言葉にならない気持ちです。』
と素直に答えていました。
本当にそうだったんだと思います。
みねこはここで絶対に勝たなければいけない大会でした。
愛媛県の一宮グループに所属し、多くの人に優勝だけを期待されてきたんです。
オリンピックを目指しながら、国体選手としても活動し、どちらも全力で本当にここまで頑張ってきたことはすごいと思います。
ウィンドサーフィンは国体とオリンピックでは使う道具が違うので、その両立は大変です。
最終日の1本、あの風のなかで1位を取って帰ってきたことは大きかったと思います。
あの風で1位を取れたのは初めてだと言ってました。
ようやく少し、これまでの努力の成果が報われたんじゃないかと思います。
心から嬉しいです。
ー写真 国体セーリングHpよりー
《 チーム愛媛の仲間と 》
3日にレースを全て終えたのは、男子種目とウィンドサーフィン女子だけでした。
次の日、まだウィンド以外の女子種目のレースが残っていました。
チーム愛媛は、
どの種目もものすごい実力を発揮し、見事天皇杯、皇后杯を勝ち取りました。
ー写真 国体セーリングHpよりー
感動の2文字、おめでとうの一言では表せません。
昨年のいわて国体で、全10種目中入賞したのがみねこ1人だったんです。
愛媛県のポイントはみねこの8点でした。
それが、なんと約60点ものポイントで総合優勝を果たしました。
みねこは直前まで江ノ島で行われた世界選手権に出場し、国体前入りは遅れ、
春や夏も海外遠征が多く、秋も葉山でのナショナルチーム合宿などで、なかなか愛媛のみんなと行動を共にできていませんでした。
でも、最後の最後に、
こうしてチーム愛媛として勝つべきこの大会でみんなで天皇杯を勝ち取ったことは、一生刻まれる財産になったんじゃないかと思います。
本当に良い仲間に恵まれてみねこは幸せだと思います。
《 勝負の世界は最後まで何があるか分からない 》
本当に素晴らしい国体でした。
結果だけを見ると、
優勝すべくして優勝したように見えてしまうかもしれません。
当たり前のように、やっぱりやってくれた!と思うかもしれません。
全てが終わった、未来から振り返るとそうかもしれない。
でも、その時、その場にいると、
本当にどうなるか分からない状況でした。
ただ、目の前の1本、1位を取りに行く!
それを積み重ねるしかなかった。
いつ風が吹いてくるか分からない
いつレースの合図が鳴るか分からない
スタートしてもいつ風がフレるか分からない
いつコースが変更されるか分からない
いつ最後のレースになるか分からない
ほんとにそんな状況でした。
だから、終わってみて、
本当にこのたった3本にその時の全てを尽くして勝利を掴んだみねこに
尊敬と敬意と、感動しかありません。
本当にお疲れ様。
あの場に、あの空間にいられたこと私も一生忘れません。
益々大きくなって、
これからも引き続きみねこはコツコツと努力し続け、前に進んでいくと思います!
そしてお疲れ様!
こうしてみねこの愛媛国体は終わりました。
次は蒲郡のワールドカップと江ノ島のオリンピックウィークです。
これからも応援よろしくお願いします!